ばらいろのウェブログ(その3)

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ウガンダの反同性愛法をめぐる状況を描いたドキュメンタリー映画『Call me Kuchu ウガンダで、生きる』が、京都でも3月9日に上映されます!

<京都>
2014年3月9日(日) 13時〜16時過ぎ
※映画上映後、字幕作成チームの遠藤まめたによるレクチャーあり。
会場:京都市東山いきいき市民活動センター 二階集会室
(最寄駅:京阪三条駅)
参加費:当日1300円
主催:さるくびとシネマ


<東京>
2014年3月13日(木) 19時〜21時終了 (開場18時半)
会場:東京ウィメンズプラザ視聴覚室 ※先着100名。
(最寄駅:表参道駅
参加費:当日1300円、カンパ歓迎。
主催:Call Me Kuchu上映会実行委員会
協力団体:女政のえん


 同性愛に対して最高で終身刑を含む重罰を科すに留まらず、"同性愛者に家を貸し、そのことを当局に通知しなかった者には、懲役5年が科される。さらに、「同性愛を広める」行為も処罰の対象とされている。この法案に従えば、同性愛者の人権に取り組む団体を組織することから、同性愛者へのカウンセリング事業を行うことまで、すべてが処罰される*1"ーーウガンダ共和国のヨウェリ・ムセヴェニ大統領は、2014年2月24日にこの法案に署名し、「反同性愛法」が成立・発効した。
 実はウガンダでは、2009年以来何度か、この「反同性愛法案」が提案され、議会でも多数の賛成を得て可決されてきた。しかし、欧米からは強い批判が寄せられ、ウガンダ大統領が署名をしなかったため法律としては成立してこなかった。ただ法律として成立はしてこなかったとはいえ、実際にこの法案に反対し、カムアウトして反対運動をしていたディビッド・カトーさんが自宅で殺されるなど、想像以上に厳しい状態が続いていた。
 映画『Call me Kuchu ウガンダで、生きる』は、この一連の動きを描いたドキュメンタリーで、昨年の関西クィア映画祭2013でも上映され、大きなインパクトを与えた作品だ。
 2月24日の反同性愛法の成立への抗議の意をこめた緊急上映会が、京都(3/9日曜)と東京(3/13木曜)で開催されます。


Call me Kuchu ウガンダで、生きる / Call me Kuchu
監督:Katherine Fairfax Wright, Malika Zouhali-Worrall
2012|米国・ウガンダ|87 min
音声:英語|字幕:日本語
公式サイト



 同性愛が終身刑だなんて、一体いつの時代の話?という気もするけれど、事情を少し調べるだけでも、大変な話だということがすぐ分かる。


 歴史的には、ウガンダを植民地支配していた英国による「ソドミー法」にさかのぼる。同性間の性行為を含む生殖目的以外の性行為を「自然に反する」として処罰する法律が、英国によってウガンダに持ち込まれた/押しつけられ、植民地の独立後も存続していた。
 また最近では、米国のブッシュ政権が、米国の宗教的右派と結びつく形でのウガンダへの経済援助を行っていた。コンドームや妊娠中絶を認めず同性愛を敵視するようなあり方とセットでの「経済援助」を行っていたのだ。映画『Call me Kuchu』にも実際に出てくるけど、米国においては同性婚が成立していくなどして負けた米国の宗教右派が、ウガンダを活動の拠点にし、実際にウガンダの集会で反同性愛の扇動発言をしたりもしている。
 そういえば「カナダ政府はウガンダで活動するアンチゲイ宗教団体へ資金提供をしていたことがわかった」というニュースもあった。


 このように、植民地支配の歴史や、現在も残る大きな経済格差、経済支援に名を借りた政策のウガンダへの押しつけ、などといった、欧米によるウガンダへの様々な形態での支配、そういった背景がある中で、ムセベニ大統領はこうも述べている。

「われわれは欧米の家族制度のあり方を見ても、自国のことではないから口を出さない。一方的に価値観を押し付けるのは社会的な帝国主義だ」
ウガンダ大統領、反同性愛法案に署名 価値観押し付けを批判 cnn.co.jp


 こういう状況下で、わたしや私たちには何ができるだろう。例えば反同性愛法という私にとっては許されない、間違った事に対して、どうすればいいのだろう。
 私が一番嫌うのは、「反同性愛法にだけ関心を持ち、ウガンダ全体のことには関心を示さない『同性愛者支援』のあり方」だ。実際に生活が厳しかったり、欧米から不当に経済的搾取を受けつつあるウガンダには全く関心を示さないくせに、同性愛者が攻撃された時だけ関心を示すあり方。そういう『支援』は、実はウガンダの同性愛者の人生の事に関心があるというより、「(他国での、声をあげても自分自身には何の危険も無いと思われる)同性愛者への迫害を見て見ぬ振りできない自分自身」の利害を中心に動いているように思えるからだ。
 とはいえ、ではウガンダとはどういう状況にあり、ウガンダの人たちがどんな困難に置かれているのか?と考えると、そんなことをこれまで考えたこともない自分がいるし、またほとんど情報が無いという現実に直面する。
 経済制裁をした方がいいのかどうかも、実は私はよく分からない。「金持ち国家の経済力をもって、ウガンダ国内の多数派同意を得た政策を変えさせる」というようなやり方が、むしろ逆に「ウガンダ国民の愛国心」を刺激して、欧米による支配への抵抗としての反同性愛、みたいになってしまわないのか。
 圧力とか制裁とかいうよりも、逆に、同性愛者を含む性の多様性を認めたら、逆にウガンダ全体の人々の生活がよくなるとか、より一層ウガンダ全体への支援が増えるとか、そういうビジョンを見ることができるようにはできないものだろうか。
 また本当は、おそらくはまず、個人として、何らかの形でウガンダの人の1人1人との人間関係を作ること。特に反同性愛の人と繋がること。そしてその人間関係の中で性の多様性や性の権利を分かってもらえるよう、個人の責任で伝えること。もしかしたらそういう取り組みを私たちの1人1人がすることこそが必要なのかも知れない。でも果たして、そんな面倒くさいことを、今の私が本当に自分の時間を使ってするのだろうか。
 1人でできるこういったことを、自分自身の責任とリスクで行うのが面倒だからこそ、自分の生活自体が危険にさらされる可能性がほとんど無い「経済制裁を!」という主張を自分がしてしまう可能性、も自覚しておかないといけない。


 などいろいろ意見がまとまらない訳ですが、今回の上映会は、そのまとまらなさをも含めて考える貴重な機会となると思います。少なくとも、日本で今知ることのできる情報としては、この映画を越えるものを私は知りません。
 上映会の主催である「さるくびとシネマ」さんについては、いろいろ問題もあり全面的に応援できるわけでは無い、と私は考えてもいます。しかし、映画と遠藤まめたさんのお話、そしてその後にもたれるであろう意見交換の場は、とても貴重な場になるのではないかと思って、企画紹介をしてみました。
 当日お目にかかれるのを、楽しみにしています。



以下、参考記事