ばらいろのウェブログ(その3)

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1.14 在特会の集会とデモの報告

在特会の集会とデモの目撃に行ってきました。簡単な報告です。


 わたしが現地に着いたのは14時頃だったんですが、地下鉄の出口をでるとすぐ、警察(機動隊)の金網付きの青いバスが2台停まっていました。初級学校の表の入口の前にも1台、学校と公園の間の道路に3台、ほかに公園の周りと併せて合計8台の機動隊のバスと2台の指揮車が停まっていました。また初級学校の門は閉じられ、その2つの門前には盾を持った警官が立ち、門前の道路も警官が立って規制していました。パッと見た感じ、警察がそれなりに本気で学校の警備をしているということが伝わってきました。確かにこれなら、本当に「学校に手は触れさせない」という方針であったのだろうと感じました。


 公園前にはまず多数の公安がおり、公園の中にはぱらぱらと集会参加者がいました。公園の向かいの土手に登ると、公園と初級学校がよく見えます。最終的には在特会側の集会・デモの参加者は30名くらいでしょうか。日の丸を掲げ、いつものようにビデオを撮っています(見た人います?)。軍服姿の参加者もいたそうです。そして公園を挟んだ反対側の土手の上には、初級学校の保護者の人たちと支援者とおぼしき人たちが、こちらも30人以上で成り行きを見守っていました。


 初級学校は、私が着いた時には既に閉門され警察に警備されており、また生徒たちは既に学外実習に出かけて留守で、学校内部には生徒の姿は見えません。窓にはカーテンがかかっています。数人の先生方の姿が見えます。



 在特会の集会は、なんか元気がなく、特にはじめは何を言っているか土手からはよく分からない感じでした。途中で小型拡声器を持った集会参加者が土手にいる人たちに向かって「言いたいことがあるなら、ここに来て言ってみろ」「お前らキムチ臭いぞ」「日本から出て行け」と挑発しますが、それには多少言い返すくらいで、土手の上から集会参加者を皆で冷笑している感じです。そもそも集会参加者自体が少なく(写真参照)、しかもこっちも人が多くてしかも上から見下ろしているので、挑発も迫力を欠いています。また、警察が本気で警備していることも、集会参加者の士気をくじいている印象でした。


 集会では、「戦後日本は領土を奪われてきた。国後、択捉、竹島、そして児童公園」などと本当に言っており、私は正直ビックリしました。デモのタイトル「1・14 朝鮮学校による侵略を許さないぞ!京都デモ」は、どうもネタと言うより、本気でそう思っているかのようでした。その後のデモでは、街宣車が大音量であじります。軍歌が流れたりもします。でも集会趣旨を読み上げることの他は、「お前ら日本人をなめるなよ」みたいなホントにベタな罵倒ばかりです。12月の時のビデオを見た時も思ったんですが、今回のデモのマイク(在特会京都支部の人たち?)は、桜井みたいなインテリ系のもの言いがほとんどできず、街宣車でただがなり立てるだけの旧来の右翼そのものでした。


 デモは、学校の横を通って近所を一周して、ローソンのあたりまで戻ってきて流れ解散、だったらしいです。でもデモ終了後も在特会側は粘って学校に近づこうとしますが、警察が警戒線を張って阻止しています。警戒線を突破しようとした在特会側の参加者の一人が警察のバスに連行されたようですが、逮捕されたのかどうかその後は知りません。


 在特会側は、罵倒し侮蔑する対象が目の前にいないので、肩すかしを食らってやることがない、という感じだったのかもしれません。土手などにいる人たちを意識して挑発しようとするのですが、「無視」「黙殺」という方針の通り基本的に相手にしないという対応なので、あちらも盛り上がりません。
 学校自体は完全に無防備、警備は警察に任せる、集会とデモに対しての抗議等もなく黙殺、そのため、ガーガーと騒いでいるのは在特会側だけで、閑静な住宅街の中で集会とデモが浮いている感じでした。近隣住民がこれを見ても、在特会側への嫌悪感が増すことはあるとしても、初級学校に対する印象が悪くなることはない、と思いました。
 私の感想ですが、今回の「黙殺」の方針は、結果から見ると一定成功だと感じました。争いを起こしているのは誰か、暴力的・攻撃的なのは誰か、それをとても分かり易く対外的に示すこともできています。また、朝鮮学校に対する不当な暴力を許さないという立場にはっきりと警察を立たせることができているのも、さすがだと思いました。私のように外の人があれこれ考えるより、現場の学校の方たちの方が状況が分かっているし、適切な判断と選択をされたんだな、と(当たり前のことを改めて)感じました。(「警察によっても守られている」と思うことができないと、「常時自分たちで防衛の警備をしないと安心できない」ということになってしまうので、学校側としても、「警察にちゃんと警備させる」ということは大事なことなんだろうな、とも感じました)


 以上を見届け、私は17時頃現地をあとにしました。


 途中、土手に立っていると、通りすがりの近所の人から「何があるの?」と2回も声をかけられました。「あそこに朝鮮学校がある。公園使用をめぐって右翼が嫌がらせに来ている」と説明すると、「そうやね、いつも子供たちが使っているね」「別に使ったらええやん」と2人共に言われました。うち1人は、そもそもそこにある建物が朝鮮学校だという事も知らなかったようで、「そうか、グランドがないのか」とビックリしていました。民族学校がどういうものであるか、そして公園使用がどのように行われているか、などをコンパクトにまとめた資料があれば渡せて良かったかも、と思いました。うん、やっぱりファクトシートはあるといいかも。


 それから、土手にいるときに、学校の保護者の方に「ありがとう」と言われて、やっぱりそれは正直辛かったです。くやしい。


 今回の「黙殺方針」が良かったなと思うことももう一つあって、もし現場で対抗行動をとって在特会を相手に実際にもめると、それで「私たちの側(支援者)」が何かしたような気になってしまう可能性があります。でも今回は何もしなかったので、そういうカタルシスがありません。実際には在特会のデモや罵倒を「私たち」は防ぐことができなかったし、通常の授業を行うことができない状況を作ってしまった訳ですが、現場での対抗行動をしなかったおかげで、そういう事実が不可視化されないで見えてくる気がします。言い換えると、在特会による攻撃を知っておきながら見て見ぬふりをした、私たちは何もできなかった、そういう事実を踏まえて、「では、何をするのか」を私たち支援者1人1人に問うことができているような気がしました。


 夕日に照らされる校舎が綺麗でした。小学生時代私は日向ぼっこが大好きでしたが、当時私が過ごしていた時間の感覚を少し思い出しました。初級学校の生徒たちも、楽しい思い出をここでたくさん作れるといいな、と思いました。