ばらいろのウェブログ(その3)

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「怪物と闘う者は、自らも怪物とならぬよう心せよ」

■拡散歓迎■


京都の岡真理です。


2008年-2009年のキャストレッド作戦のとき、地上戦を前にイスラエルは、外国人のみガザを出ることを許可しました。そのとき、ガザにいた何人かのインターナショナルズ[占領下のパレスチナ人の人権擁護活動をする外国人アクティヴィスト]は、ガザにとどまることを選びました――彼らの命より、私たちの命の方が価値があるのですか…?と言って。


そのひとり、イタリア人のヴィットリオ・アッリゴーニさんは、キャストレッド作戦のあとも封鎖下のガザにとどまり、パレスチナ人と生活をともにしてきました。しかし、2011年4月、何者かに誘拐され、殺害されました(ハマースはじめ、パレスチナのさまざまな党派が犯行を指弾しました)。


ヴィットリオさんが、キャストレッド作戦のとき、ガザから発信し続けたルポはその後、“Stay Human"(人間であり続けること、人間の側に留まり続けること)というタイトルで出版されました(原著イタリア語、英訳あり。日本語版は翻訳が進行中です。一日も早く日本語版が刊行されることを待ち望んでいます)。


人間であり続けること――


「ガザの婚礼」で言及した、イブラーヒーム・ナスラッラーの小説『アーミナの婚礼』のテーマもそれでした。ある日、アーミナの夫はアーミナに言います、


――ねえ、アーミナ、人間が真に敗北するのはいつか、知っているかい?人間はね、この世に自分以外に大切なものはないとなってしまったときに、真に敗北するんだよ……


以下、エジプト系アメリカ人の詩人、ヤヒヤ・ラバービディの詩をご紹介します。
英語のあとに、日本語訳を載せています。

An open letter to Israel

http://electronicintifada.net/content/open-letter-israel/13764


Yahia Lababidi
The Electronic Intifada 18 August 2014



He who fights monsters should see to it that, in the process, he does not become a monster. ? Nietzsche


Tell me, what steel entered your heart,
what fear made you rabid,
what hate drove out pity?


How could you forget
that how we fight a battle
determines who we become,
when did you grow reckless
with the state of your soul?


We are responsible for our enemy,
compassion is to consider the role
that we play in their creation.


If you prick us, do we not bleed?
… If you poison us, do we not die?
and if you wrong us, shall we not revenge?


Strange, how one hate enables another;
how they are like unconscious allies,
darkly united in blocking out the Light.


Yes, we can lend ideas our breath, but ideals ?
Peace, Justice, Freedom ? require our entire lives
and, all who are tormented by such ideals
must learn to make an ally of humility.


Truth, and conscience, can be like large, bothersome flies
ー brush them away and they return, buzzing louder
nearly 2,000 dead, in Gaza, 500 children
no, these are unbearable casualties to ignore


To speak nothing of the intangible casualties:
damage done to our collective psyche, trust, and sleep
no more nightmares, please, give us back our dreams
we can still begin, again, and must
wisdom is a return to innocence.

イスラエルに対する公開書簡


ヤヒヤ・ラバービディ
エレクトロニック・インティファーダ / 2014年8月18日


怪物と闘う者は、自らも怪物とならぬよう心せよ――ニーチェ


教えてくれ、いかなる鋼(はがね)がおまえたちの心に入り込んだのか、
いかなる恐怖がおまえたちを凶暴にしたのか、
いかなる憎悪が憐れみを追い払ったのか?


なぜおまえたちは忘れるのか
私たちがいかに闘うかが
私たちが何者となるかを決めるということを
おまえたちがなりふり構わぬようになるとき、
おまえたちの魂のありようもまた?


私たちは私たちの敵に対して責任がある
共感共苦は熟慮する
敵の創造において私たちが果たす役割を


おまえたちが私たちを刺す時、私たちは血を流さないか?
……おまえたちが私たちに毒を飲ませるとき、私たちは死にはしまいか?
おまえたちが私たちを虐待するとき、私たちは復讐を誓わないか?


奇妙なことだ、一方の憎しみは他方を
まるで無意識の同盟者であるかのように、
暗く結びつけるのだ、光を閉めだして


そうだ、私たちは考えに息吹を与えることができる、だが理想は――
平和、ジャスティス/公正、自由は――私たちの生のすべてを要求する
そしてそれらの理想に苦しむ者はみな
学ばなければならない、ヒューマニティ/人間であることの側に立つことを


真実、そして良心は、大きな、うるさい蠅のようでありうるのだ
――払い除けても、舞い戻ってくる、さらに大きな羽音を立てて
2000人近くが死んだ、ガザで、500人の子どもたちも
否、無視するなど耐え難くてできない死傷者たち


手を触れることのない死傷者たちについて何も語らないでいることが
私たちの集団的なプシュケー/魂を毀損する
二度とこのような悪夢を繰り返してはならない、お願いだ、私たちの夢を返してくれ
私たちはまだ始めることができる、何度でも、そうしなければならないのだ
知恵とは無垢なるものに回帰することだ

  • ヤヒヤー・ラバービディーはエジプト系アメリカ人の思想家、詩人。5冊の著書がある。アル=ジャジーラ、ガーディアン紙をはじめさまざまな媒体でとりあげられている。


[翻訳:岡 真理]
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以上