ばらいろのウェブログ(その3)

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今日の作品「刑法175条」

「刑法175条」
http://www.yidff.jp/2001/cat021/01c034.html

 ナチスによる迫害が、ユダヤ人だけではなく同性愛者にもおよんでいたことはあまり知られていない。この映画は同性愛者を差別するドイツの“刑法175条”によって迫害を受けたゲイ男性たちとひとりのレズビアンについて、歴史に隠された一面を聞き出している。ハインツは強制収容所での体験を告白し、フランス人ピエールは自分のボーイフレンドが虐殺されるのを目撃し、ユダヤ人のガドは地下抵抗組織の指導者としての経験を語る。


 よい作品でした。
 最近のわたしの関心事は、暴力や差別が行われている現場における、各個人の振る舞いや、その社会的責任というようなことですが、ナチスが政権を取り、ユダヤ人やゲイが迫害されていく過程において、各自が家族を見捨てて自分だけ亡命したり、逆に逃げずに自ら強制収容所送りになったり、その周りの人がいろんな事をしたりしなかったり、各個人の人生上の選択について、そんな具体的な話がいっぱい出てきます。
 また、性的な拷問を受けた一人のゲイの、その経験を語る話し方が、これも印象的でした。性的な暴力を受けた人の、「自身の経験を語ることの困難さ」が、切実に伝わってきました。
 「差別される同性愛者」を単純化して描いた作品ではなく、1人1人の生き方と選択を問う、考えさせられるいい映画だと思います。