ばらいろのウェブログ(その3)

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「トランスジェンダーではない人」の社会的特権ーThe Non-Trans Privilegeー


 2008年3月15・16日に、GID(性同一性障害)学会・第10回研究大会高槻現代劇場で開催されます。
 一般演題の受付をしていたので、「『トランスジェンダーではない人』の社会的特権ーThe Non-Trans Privilegeー」というタイトルで(無謀にも)申し込みをしたんですが、受け入れられたようです。ただ、「発表7分、質疑3分」なんですけどね。
 以前2005年に関西でこの学会があった時は、カルーセル麻紀さんが来てくれて自身の体験を話してくれた(さすが、先人は強烈です)ことと、虎井さんが(自分の戸籍を変えたからそれで終わり、ではなく)特例法の改正のために尽力されていることをお聞きしたことが、印象に残っています。
 「GID(性同一性障害)学会」という名前なので、「性同一性障害」で自身を呼ぶことがあり得ない私のような者に発言の余地があるのかどうか一瞬は躊躇したんですが、プログラムでも「世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会会長」とか呼んでいるし、「トランスジェンダー」という言葉を使ってトランスジェンダーのことを扱っているので、この際まったく気にせず遠慮なく「トランスジェンダー派」として言いたいことを言うことが、良いのではないかと考えています。GID性同一性障害)という概念が普及したことによって得られた肯定的なものと、それによって不可視化/後景化されてしまったものがある訳で、まさにGID性同一性障害)という言葉や概念で動いている人達のいる場でその限界と先の展望について訴える、ということが、私の仕事ではないかと。あぁ怖い怖い。
 なので、「GID(性同一性障害)学会」という名前のおかげで「何か気に入らない」「自分の行く場ではない」と感じているトランスジェンダーの方も、是非、顔を出して自己主張しましょう!!遠慮することはないです。

トランスジェンダーではない人」の社会的特権
ーThe Non-Trans Privilegeー

 最近では「LGBT」を看板に掲げた社会運動も増えてきました。しかしその運動の現場に行った時に、その場にいる人々が「トランスジェンダーのことを、実は全然分かっていない」と感じることがよくあります。確かに、性的少数者が集まる空間では露骨にトランスジェンダーの存在を否定する人は少ないかもしれません。しかし実のところ「トランスジェンダーではない(シスジェンダーである)」ということが持っている社会的な特権について、ほとんど自覚されていないように思えるのです。
 もちろんそれは、性的少数者が集まる空間に於いてだけではありません。
 この10年間、性同一性障害という概念が導入され、多くの人達の献身的な努力によってSRSも合法的に行われるようになり、一部の人は法的書類上の性別の変更も可能になりました。「私たち」の権利を拡大してきたこういった動きは、何より必要なものでした。
 しかし一方で、「性同一性障害」をキーにしたアプローチでは、性別の自己決定権を根拠とした運動とは異なり、日本社会の多数派の現在の意識に制約を受ける側面も強くあります。そのことは、性別変更の特例法の限界に、顕著に表れていると思います。
 性別のあり方が典型的ではない人達、外見や身体の様々なレベルの性別が単純ではなく多様性がある人達、つまりトランスジェンダーの人達が、典型的で単純な性別しか持たない人達と「対等に」扱われている社会とは、どういうものでしょうか。社会的な多数派/少数派と公正さという観点から、「トランスジェンダーではない人」の社会的特権について、考えてみたいと思います。

3月16日(日)11:40-12:10 一般演題5

21.性同一性障害と当事者団体の支援 
渡邉圭 文教大学人間科学研究科


22.「トランスジェンダーではない人」の社会的特権−The Non-Trans Privilege−
ひびのまこと 関西クィア映画祭


23.QOL向上のための当事者サポートを考える−LIFE&LIVE−
真木柾鷹 ESTO


ヨシノユギさんもエントリーしたと伝え聞いたんだけど、どんなことを話すのかな。楽しみ楽しみ。