ばらいろのウェブログ(その3)

ひびのまことの公式サイト→ https://barairo.net/

朝鮮学校(高級部)を無償化の対象から外す動きについて、ほか


 現在衆議院で審議されている「高校無償化法案」に関連して、朝鮮学校(高級部)を無償化の対象から外す動きがあります。
 これまでも、朝鮮学校は主として在日朝鮮人たちが自分たちの力で設立・維持・運営してきたので、今回朝鮮学校だけ無償化されない(お金が出ない)としても、そのことによって直接朝鮮学校が潰れたりするわけではありません。
 朝鮮学校以外の外国人学校に対しては排除の動きはありません。ここで朝鮮学校だけがねらい打ちで除外されるということは、日本政府が、日本社会が、朝鮮学校に対して「社会的公的に支援や保障をする必要がない/すべきでない学校である」という認定を、(近年に限っても)大学入学資格問題の時に引き続き、改めて公式に行うことになります。
 実は今回に限らず、日本政府は朝鮮人の民族教育を一貫して攻撃・否定し続けてきました。1948年には朝鮮学校閉鎖令を出し、実際に武装警官を投入して民族学校をつぶそうとさえしました。もちろんこういった政策は、朝鮮半島の植民地支配から現在まで続く朝鮮人への差別以外の何ものでもありません。
 日本という国や社会は日本人や日本国籍保持者だけのものではありません。日本社会の多数派である日本人が日本を私物化するのを許してはいけません。そもそも日本政府は、日本人ではない人が自分の望む民族教育を受ける権利を保障する義務と責任があります。だからこそ、様々な外国人学校に対しても日本の公立高校と同様に無償化を行うというのは、当然のことです。その中でも特に、植民地支配を行った歴史的経緯から、在日朝鮮人の民族教育を保障することは、本来なら日本政府が積極的に行うべき仕事なのです。


 昨年来、在日朝鮮人の人権問題に関連する動きに少しだけ顔を出したりもしていますが、どうもこの問題は、単に「いま在日朝鮮人が差別されている」という単純な話ではないような気がします。植民地支配などの歴史的経緯をふまえ、その不当な政策を不当であったと確認したうえでないと、現在の在日朝鮮人が置かれている状況を理解することはできないと思います。

 その上で、在日朝鮮人の運動や支援運動のあり方には、どうも素直に共感/支持できない部分があることも、(予想通りではありますが)感じています。フェミニズムフーコー以降、もしくはサパティスタ民族解放軍の蜂起以降、社会運動の内部にも差別や抑圧があることを公的に認めた上でそれに対応する必要性や、社会運動内部の意見の不一致を積極的に肯定/公開して公に論争する必要性(運動内部の少数意見の扱い)、社会運動自体を公的なものとして位置づけて民主的なプロセスによって意志決定と運営を行う必要性、などが社会運動の中で言われ、実際に世界の運動は多少はその影響を受けています。しかし在日朝鮮人の運動や支援運動の場では、そういったことが積極的に目指されているという印象は、なかなか持てません(例えば北朝鮮政府への批判は、やっぱりタブーになっている印象がある)。正直、ちょっと古い運動だという感覚を拭えません。
 その原因を、日本社会の排外性が今でも厳しいことや多数の日本人が極めて鈍感であることや今でも国策で差別と弾圧があることなどにも求めることはできますが、しかしそれだけで済ませてはいけないと思います(むしろ、日本の社会に問題があることを口実にして、既存の権力や権威主義が温存されているのではないか、という印象も持つことがあります)。
 鄭暎惠さんが女性学年報第15号で「在日韓国朝鮮人」の運動について書いていたことは、まさに「在日韓国朝鮮人」の運動の内部から、その運動を改革していこうとする試みだったんだなぁと、改めて思います。

現在「在日韓国朝鮮人」の運動は混迷しており、それは自らのうちにある矛盾からくるものと、私は認識しています。その矛盾を解く鍵のひとつが、性差別を問うことで見えてくると思います。
(鄭暎惠「開かれた家族に向かって―複合的アイデンティティーと自己決定権―」女性学年報第15号 1994)


 そんな状況の中で、既存の民族団体の組織的な活動からは距離を置いて自分にできることをしている人もいます。また、まさにその民族運動の中で活動している人も、実は悩んだり考えたりしながら運動している事も知りました。組織的な運動の内部に居続けて発言を続けることは、実は結構大変なことです。
 私としては、既存の民族運動を「マイノリティー当事者だから」と無責任に無限定で支持したり、運動内部の暗黙のタブーに従ってしまうことは、既存の運動を変えていこうとする運動内部の動きへの抑圧にも為りうることを、改めて思い起こしています。



本日、以下の集会があります。
私は別の重要な会議があるので参加しませんが、お知らせまで。

『高校無償化』からの朝鮮学校外しを許さない京都同胞緊急集会

日 時:2010年3月5日(金)
    午後7時開場 7時30分開会
会 場:ラボール京都(労働者総合会館)
    京都市中京区壬生仙念町30-2 (TEL)801-5311
    阪急電車「西院」駅より東へ徒歩5分
    http://www.labor.or.jp/kaikan/access.html
参加費:500円(資料代と文科省要請団カンパ)

 高校の無償化法案は26日衆議院本会議で審議入りしました。朝鮮学校の取り扱いについては文部科学省が3月中旬までに省令で定めるとしています。
鳩山由紀夫首相は4月からの実施予定の高校無償化で中井洽拉致問題担当相が朝鮮学校を対象から外すよう求めていることについて、「除外する方向で最終調整をしている」ことを明らかにしました。
 又、「国交のない国だから、どういう教科内容かも調べようがない。同じように扱うことが望ましいかどうかという議論はしなければならない。結論はまだ決めていないが、常識的には、日本人と国交のある国の方々が優先されることは、それほど無理のない話ではないか」と発言をしています。
 この首相の発言は政治や外交上の思惑で朝鮮学校を高校無償化の対象から外そうとするものです。これは同法案の理念や趣旨に真っ向から反するものであり、新たに深刻な差別をうむことになります。私たちは朝鮮学校が高校無償化の対象として適用されなければならないと強く訴えます。

主 催:「高校無償化」からの朝鮮学校外しを許さない
     京都同胞緊急集会実行委員会
(在日本朝鮮人京都府民族教育対策委員会、学校法人 京都朝鮮学園朝鮮学校オモニ会京都府連絡会)
問合せ:実行委員会事務局 (TEL)313-6161


■集会チラシ
http://barairo.net/musyo-ka/20100305.pdf
■オモニ会のチラシ
http://barairo.net/musyo-ka/omonikai.pdf


以下のリンク、割と面白いです。
■日朝国交「正常化」と植民地支配責任
http://kscykscy.exblog.jp/