ばらいろのウェブログ(その3)

ひびのまことの公式サイト→ https://barairo.net/

有色トランス女性達が立ち上がり声をあげたストーンウォール暴動は1969年6月28日

有色トランス女性達が立ち上がり声をあげたストーンウォール暴動(米国ニューヨーク)は1969年6月28日。
米国LGBT運動の転換点としてよく言及されます。
今年はその50周年です。

ストーンウォール暴動から50年目の今年6月、映画の上映を含む企画がいくつかあります。
声をあげ闘ったトランス女性たちの姿をスクリーンで見てほしい。
そして、トランス女性たちが何を訴えているのか、知って欲しい。
トランス女性たちは、セクマイ内部のトランス差別とも闘ったことを知って欲しい。

以下、上の二つは関西クィア映画祭が協力している企画、三つ目の京都の企画は関西クィア映画祭が主催するミニ企画です。ぜひご参加下さい。

▼6/8土・東京PURX

『Happy Birthday マーシャ!』上映ほか

https://mobile.twitter.com/PURXinfo/status/1134013901840928768


PURX PRE-OPEN
映画上映 & レクチャー | 2000 YEN (ドリンク別)
東京都台東区竜泉1-1-2

▼6/29土・東京ウィメンズプラザ 視聴覚室
『Major(メジャーさん)!』上映会

ストーンウォール50周年記念 映画「Major(メジャーさん)!」上映会 | Peatix


上映会(1) 13時から14時半(開場:12時45分) 
上映会(2) 15時から16時半 (開場:14時40分)  
 ※2回とも同内容を上映します。
 ※上記サイトで前売チケット購入できます

 

▼6/29土・京都大学吉田寮食堂
ストーンウォール暴動50周年★関西クィア映画祭ミニ企画

【6/29 京都】ストーンウォール暴動50周年★関西クィア映画祭ミニ企画

==============================
この問題を考えるための参考までに、
書いておきます。
==============================

●「ゲイの暴動」と呼ぶことの問題

この「ストーンウォールの暴動」は、しばしば、日本語でも「ゲイの暴動」だと言われてきました。
しかしこれは正確な表現ではありません。より正確に、有色トランス女性達が立ち上がり声をあげた暴動だ、と認識し、表現することが、いま必要とされていると思います。
(シスジェンダーの)男性同性愛者を中心とした不適切な歴史観から抜け出すことが、今求められているのです。
トランス女性に対する差別は、社会全体だけではなく、セクマイ/LGBTコミュニティーの内部にも、当時から今もあり、それに抵抗することが今もまだ必要だからです。


●映画『ストーンウォール』は厳しく批判された

米国で2015年に作られた映画『ストーンウォール』は、白人のシスジェンダーの男性同性愛者を暴動の主人公にして描いたため、米国のセクマイ当事者たちから厳しい批判をあびました。それは歴史的な事実に反している、と。
実際、50年前に起きた「ストーンウォールの暴動」で最初に立ち上がったのは、プエルトリコ系のトランスジェンダー女性シルビア・リベラさんと、黒人ドラァグクイーンのマーシャ・P・ジョンソンさんだと言われています。
歴史の事実を歪めて作られた映画『ストーンウォール』は、まず何より「白人による横領(ホワイトウォッシュ)=有色人種への差別」であり、そして、シスジェンダーの同性愛者による横領(=トランスジェンダー差別)、男性による横領(=女性差別)でもあります。
今こういった批判が起きるのは、米国のコミュニティー内部にも、今も、有色人種への差別/トランスジェンダー差別/女性差別があり、それに抵抗することが必要だからなんだと思います。

【参考】

映画『ストーンウォール』が史実を無視しシス白人男性をヒーローに。ボイコットに2万人が署名 - 石壁に百合の花咲く




●英語の「GAY」と日本語の「ゲイ」とは意味が違う

英語で「GAY」は、「男性同性愛者」という意味で使われることもありますが、「男女という制度」や性別規範に外れる人たちを総称する意味で使われる場合もあります。50年前の「ストーンウォールの暴動」を英語で「GAYの暴動」と言う時には、後者の意味です。
しかし日本語で「ゲイ」と言った時には、それは「男性同性愛者」を主に指します。セクマイ全体を包括するような意味で、日本語の「ゲイ」という用語が使われることはほとんどありません。
だからこそ、「ストーンウォールの暴動」を日本語で「ゲイの暴動」と言ってしまうことは、事実に反する不適切な行為となります。
先にも見たとおり、そもそも「ストーンウォールの暴動」は「シスジェンダーのゲイ男性の闘い」ではありませんでした。でも日本語で「ゲイの暴動」と言ってしまうと、それは、「ストーンウォールの暴動」が「シスジェンダーのゲイ男性の闘い」であったと言ってしまうことになるからです。


●東京レインボープライドの不十分な記述

また、東京レインボープライドも、以下のように記載しています。

ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」で、ゲイ(今でいうところのLGBTQ+)たちが警察の手入れに対し初めて抵抗し、それは数日間にわたる暴動に発展しました。いわゆる「ストーンウォールの反乱」です。

ABOUT TRP2019 | 東京レインボープライド

上記に書いたように、抵抗の主体として日本語の「ゲイ」を使用するという問題があります。
それに加えて「初めて抵抗し」と書くことで、「ストーンウォールの暴動」の前年にトランス女性たちが起こした「コンプトンズ・カフェテリアの暴動」の存在を消し去っています。トランスジェンダーの人たちの闘いを無視する不適切な態度です。東京レインボープライドには、(シスジェンダーの)ゲイ男性を中心とす歴史観に、明確に距離をとって欲しいと心から思います。
【参考】

コンプトンズ・カフェテリアの反乱 - Wikipedia


●日本のトランス女性への差別

日本でも、セクマイコミュニティー内部における、トランスジェンダーやトランス女性への差別は、続いています。
「WOMAN ONLY」を掲げるクラブが、法的に女性IDを持つトランス女性の入場を拒否して、トランス差別だと問題になっているのは、今年の東京での事件です。
【参考】

wezz-y.com




●日本の人種差別

米国のセクマイコミュニティーLGBT運動の内部における人種差別の話をするのが得意な活動家や学者/院生は一定数いますが、その同じ人たちが、日本社会や日本のセクマイコミュニティー/LGBT運動の内部にある日本の人種差別/民族差別に対して、同様に熱心に問題化するのを、ぜひ見てみたいとわたしは心から思っています。
国勢調査に関しての松浦参議院議員(当時)の国会質疑「セクマイだって日本国民」は、文字通り分かり易い外国人差別発言でしたが、これを批判する声は広がりませんでした。クィア学会は、学会発表を日本語に限定し、それが批判を受けても日本語要件を維持し続けるなど、分かり易い日本人中心主義を実践しました。
「私たち」の中でも、課題は山積です。
【参考】

京都スペシャル - 日本のレイシズム—朝鮮人差別への無関心 « 関西クィア映画祭[KQFF] 2012



 

6/29(土)に、京都大学吉田寮食堂で開催の

【6/29 京都】ストーンウォール暴動50周年★関西クィア映画祭ミニ企画

では、こういった問題についても取り上げていきたいと思っています。
ぜひ、お越し下さい。

ひびの まこと

==============================